2018年度診療報酬改定の全体像と要点について~ 2025年を生き抜くためのポイントを読み解く~(4)

6.今後の病院経営における視点

 

 2018年度診療報酬改定について、今改定までの流れと政策の動向、今改定の全体像と主な要点を見てきましたが、最後に今後の病院経営において持つべき視点について考察していきたいと思います。

 今改定は2012年以来の介護報酬との同時改定だけでなく、将来の医療・介護提供体制構築に関わる複数の計画が同時にスタートする事から、「惑星直列」とも称されています。中でも地域医療構想を盛り込んだ第7次医療計画がスタートする事が、大きなポイントです。
医療計画について

 地域医療構想とは、2025年モデルを実現するべく、地域における2025年の医療需要(入院・外来別・疾患別患者数等)、*二次医療圏ごとの医療機能別の必要量を含め、その地域にふさわしいバランスのとれた機能分化と連携を推進する事を目的に、都道府県が厚生労働省の定める『地域医療構想策定ガイドライン』に基づいて策定するものです。
 厚生労働省は今改定と地域医療構想の関連性に対し、診療報酬で「誘導する」のではなく、「寄り添って」、「支援する」と表明していますが、入院基本料の評価体系の見直しは、地域医療構想とある程度整合性をとる目的もあるものと考えられます。この事が「病院に手厳しく、診療所に手厚い改定」と評されるゆえんですが、地域医療構想が示している事を正確に読み取る事が大事です。地域医療構想が示す事は、地域における2025年の人口構造に合わせた病床構成の将来像であり、その中で自院がどの役割を果たすべきかを見極める事こそが重要です。
 以上をふまえ、今後の病院経営において持つべき視点について考察していきます。

 1つめは診療の効率化と質の向上です。地域医療構想による必要病床数は、地域医療連携の充実と在院日数の短縮を前提として策定されています。診療実績による評価の導入は、データ分析等が発展して客観的な指標による評価が可能になっただけでなく、入院日数の短縮化の徹底のため、成果を意識した医療を提供させるという目的も含まれているものと考えられます。今後もこの傾向がより強化されていく事が想定され、今まで以上に「アウトカム」を重要視し、より効率的で質の高い医療の提供に努めなければなりません。

 2つめは勤務環境の改善と働き方改革の推進です。今回総合入院体制加算や医師事務作業補助体制加算の施設基準が厳格化された事も含め、計画的に取り組む事が肝要です。この上で視野に入れるべきは、柔軟性ある組織風土の醸成です。医師等の高齢化をふまえ地域医療の確保には、医療従事者の長時間労働の是正が必須ですし、若い医師や看護師を確保する為にも多様な働き方の導入を推進していく必要があります。
 また、地域包括ケアシステム構築の中で、医療従事者の働く場所も多様化し、どのような職場でも通用する技能が求められるようになります。医療従事者がこれまで以上に各々の専門性を発揮する為には、一人ひとりが自分らしく働く事ができる職場環境が不可欠です。働きやすさを高めるだけでなく、働きがいの向上も含めた勤務環境改善が必要です。

 最後は地域への貢献です。医療は今や電気、水道と同様に人々の暮らしに欠かせない重要な社会インフラであるという考え方が広がりつつあり、まちづくりをどうデザインしていくかという大きな考えの中で、自院がどういうポジションをとるべきかを考える必要があります。この事から、病床機能の選択は診療報酬ではなく、将来担う役割を主軸に何に経営資源を投資するべきなのかを見極める事が重要です。
 また機能を選択する上で、地域ニーズをとらえる事も重要です。ニーズを的確にとらえるには地域住民との交流が不可欠であり、地域のイベントに積極的に参画するなど、地域住民に対するアピールが必要です。自治体に協力し認知症やロコモティブシンドローム等の疾病予防活動を企画する事も、将来に向けた経営戦略の一環として有用な取り組みであると思われます。

 2025年は高齢化社会の終着点ではなく、更なる超高齢社会、人口減少社会の入り口です。将来の医療提供体制像をふまえた上で自院の方向性を見極め、地域ニーズにかなった機能選択を行えば、2025年から先も安定した病院経営が実現できるものと考えます。
 地域志向の経営戦略とポジショニングこそが、2025年を生き抜くカギです!

二次医療圏
【参考文献】

・岩渕 豊 「日本の医療政策」 中央法規出版株式会社(2013年6月)
・細谷 邦夫「2018年度診療報酬・介護報酬同時改定のポイント~外来編~」TKC医会研第16期第1回継続研修会資料(2018年2月)
・尾形 裕也「医療政策の動向:地域医療構想を中心に」生活福祉研究 通巻94号 (2017年8月)
・神田 慶司ほか「動き始めた地域医療構想の意義と課題~病床再編で進む医療の効率化~」大和総研調査季報 2017年夏季号vol.27
・五十嵐 哲也ほか 「医療・介護におけるまちづくりのあり方」JHAMC2018年6月号(公社)日本医業経営コンサルタント協会
・「医療費適正化基本方針の改正・医療費適正化計画について」http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000148008.pdf#search=%27%E5%8C%BB%E7%99%82%E8%B2%BB%E9%81%A9%E6%AD%A3%E5%8C%96%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%96%B9%E9%87%9D%E3%81%AE%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%83%BB%E5%8C%BB%E7%99%82%E8%B2%BB%E9%81%A9%E6%AD%A3%E5%8C%96%E8%A8%88%E7%94%BB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%27
・地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会資料 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=216011
・中央社会保険医療協議会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo.html?tid=128154
・メディファクスweb
http://mf.jiho.jp/servlet/mf/index.html

【編集後記】
 2018年度診療報酬改定より約半年が経過しました。 厚生労働省において、今改定での入院医療の評価体系の再編等の改定項目の検証を進めていますが、次期改定では消費税率引上げへの対応も重要な視点のひとつになると考えられます。
 今改定では、ICTを活用した遠隔診療、遠隔モニタリングに対する評価創設も大きな目玉として注目されましたが、半年経過して思ったように報酬が算定できないという声も多く、伸び悩みが懸念されています。オンライン診療については、対象疾患の幅や特定の管理料の算定から同一の医師によって対面診療が行われている等の算定要件に見直しが必要という意見のほか、診療の質の確保が議論され、医師会関係者の間では抑制的に進めていくべきという意見も根強い状況です。
 しかしながらオンライン診療の実施にかかわらず、今後の病院経営において地域の他施設との協働という視点が重要である事を含め、ICTを活用した情報連携の為の環境整備が必須です。本文中に述べた適切なポジショニングを行う為にも、情報を正確に捉え上手く活用できる人材が必要です。高度ICTスキルを持つ人材の育成も、2025年に向けた重要な戦略であると考えます。
 最後に本文中にも述べましたが、今後更に人手不足が深刻化する事をふまえ、医療従事者の定着化が最も重要な課題と思われます。特に医師の負担軽減を進めるには、他職種の業務向上が不可欠であり、どの様に動機づけを行うかも十分な検討が必要です。
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