2018年度診療報酬改定の全体像と要点について~ 2025年を生き抜くためのポイントを読み解く~(3)

5.その他改定項目の概要(後編)

 
 前回は、急性期入院医療の評価体系の再編・統合以外の代表的な改定項目の前編として、地域包括ケアシステム構築におけるサブアキュート機能(在宅、介護施設等からの受け入れ)の強化を目的とする地域包括ケア病棟入院料の改定と、医療従事者の働き方改革の推進、医療分野のICT活用を目的とした改定項目を取り上げました。

 今改定において、医療連携、多職種連携等の「連携」の強化を目的とした評価の新設、算定要件の見直しも重要なポイントの1つです。
 後編では、その中の代表的なものをピックアップしていきます。

①医療連携、多職種連携等の「連携」の強化を目的とする改定項目について(抜粋)

【新設された項目】

連携 新設項目

 『初診料機能強化加算』は、病診連携・機能分化の強化を目的に、「かかりつけ医機能」を有する医療機関の初診に対する評価として新設された初診料の加算です。
 算定要件は、「日本医師会・四病院団体協議会合同提言」(平成25年8月8日)による「かかりつけ医」の定義と、「かかりつけ医機能」にもとづき、下記の(1)~(3)のいずれにも該当する事を届出ている事となっています。
かかりつけ医、かかりつけ医機能もろもろ

初診料機能強化加算の算定要件
 『療養情報提供加算』は、入退院(所)時の医療機関等と訪問看護との連携の推進を目的として新設された診療情報提供料(Ⅰ)の加算です。算定要件の「指定訪問看護に係る情報」とは、訪問看護療養費の訪問看護情報提供療養費3において用いる様式で訪問看護ステーションから提供された文書のことであって、訪問看護報告書で記載されている内容だけではなく、継続した看護の実施に向けて必要となる「ケア時の具体的な方法や留意点」又は「継続すべき看護」等の指定訪問看護に係る情報が必要です。(平成30年3月30日発出 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」より)

 『診療情報連携共有料』は、地域包括ケアシステム構築における医科歯科連携の推進として、歯科診療を行う上で必要な処方内容等の診療情報を、かかりつけ医とかかりつけ歯科医の間で共有する事に対する評価として新設された項目で、医科歯科共通(共通名称、共通点数)です。検査結果や投薬内容等を文書で提供した場合に、提供する保険医療機関ごとに算定できますが、算定には制限があり、患者1人につき3月に1回限りの算定で、診療情報提供料(Ⅰ)を算定した月は算定できません。

 『入院時支援加算』は、 患者が入院生活やどのような治療過程を経るのかをイメージし、準備した上で入院に臨めるよう、入院生活に関するオリエンテーション等の入院前の支援に対する評価として新設されました。 算定要件、施設基準は次のとおりです。
入院時支援加算200点の要件 患者の病態等により(1)~(8)について全て実施できない場合は、実施した内容の範囲で療養支援計画 を立てても差し支えないが、この場合であっても、(1)、(2) 及び(8)は必ず実施しなければならないとしています。((2)は患者が要介護又は要支援状態の場合のみ) 

 また従来の『退院支援加算』は、入院早期から退院後までの切れ目ない支援を評価する事から名称が見直されて『入退院支援加算』に変更し、「退院困難な要因」にも次の3ケースが追加されました。
入退院追加3ケース【要件が見直された項目(対象追加、緩和等)】

 『退院時共同指導料1、2』における共同指導の評価対象に薬剤師、管理栄養士、理学療法士、社会福祉士が追加されたほか、下記の指導料、加算について、障害福祉サービス事業における相談支援事業者や相談支援専門員との連携が評価されるようになりました。
要件見直し 『診療情報提供料(Ⅰ)』は、『歯科医療機関連携加算』の算定対象に摂食障害を有する患者(疑い含む)が追加され、算定要件も「在宅療養支援歯科診療所に対して情報提供を行った場合」から「在宅歯科医療を行う歯科を標榜する医療機関に対して情報提供を行った場合」に緩和されました。

【特別の関係の見直し】

 「特別の関係」とは同一法人のほか、開設者や代表者が同一あるいは親族関係にある場合等が該当し、医療機関と訪問看護ステーションが「特別の関係」にあたる場合、退院時共同指導加算等は算定不可とされていました。
 今改定では、入院医療機関と退院後の在宅療養を担当する関係機関間の連携を推進する観点から、入院医療機関が連携先の医療機関と「特別の関係」にあたる場合も算定可能となるよう要件が緩和されました。
 
特別な関係でも算定可能

 

②その他留意事項について

【施設基準の厳格化】

 病院勤務医の負担軽減と処遇の改善を要件とする総合入院体制加算、医師事務作業補助体制加算について、点数が引き上げられるとともに、より実効性ある取り組みが必要であるとして施設基準の一部が厳格化されました。
 「医療従事者の負担の軽減、処遇の改善に資する計画」(以下計画)に、負担軽減に効果のある複数の取り組みを項目に盛り込む事と、取り組み事項を院内に掲示する 等の方法で公開する事が要件化されました。(取り組み事項は下記図表を参照)
 今後当該加算の届出医療機関は、取り組み事項のうちいずれか2項目を計画に盛り込んでいる事が前提となります。
施設基準変更

 また計画に記載した医師と医療関係職種、医療関係職種と事務職員等における役割分担の内容(初診時の予診の実施、入院説明の実施等)について、院内に周知徹底の上役割分担推進のための委員会を開催し、定期的に取り組み状況の評価、見直しを実施する事も追加されました。この事から、計画の着実な実行と実績の見える化が重要であり、委員会の実施内容を証明するため議事録の整備等も必要になるものと考えます。

 
【ベンゾジアゼピン系抗不安薬等の長期処方適正化】

 第3期医療費適正化計画に関連して、抗不安薬、睡眠薬の多剤併用に対する適正化として、ベンゾジアゼピン(BZ)受容体作動薬の長期処方に対する処方料、処方箋料の減算規定が設けられました。
 平成30年4月以降、不安の症状又は不眠の症状に対し、ベンゾジアゼピン系の薬剤を12月以上連続して同一の用法・用量で処方した場合、処方料と処方箋料がそれぞれ29点、40点に減点されます。(ただし、当該症状を有する患者に対する診療を行うにつき十分な経験を有する医師が行う場合又は精神科医から抗不安薬等の処方について助言を得ている場合等特に規定する場合は除外。)「不安神経症」の患者にデパス(エチゾラム)、ソラナックス(アルプラゾラム)、リーゼ(クロチアゼパム)等を長期処方している場合は、今後査定される可能性があるので注意が必要です。
  改定後の抗不安薬の処方に関する調査結果(平成30年8月時点)では、一部減量に取り掛かっている医師もいるものの、使いやすさ、即効性等の理由でデパス、ソラナックス、リーゼの処方が依然として多く、患者に減量や中止をすすめても激しく抵抗されてやむを得ず処方し続けているという意見もありました。

 
 以上、入院医療の評価体系の再編以外の主要な改定について2回にわたってみてきました。
 今改定について、病院団体の間では「病院に厳しく、診療所に手厚い改定」と評されていますが、医療従事者の専従要件の緩和等は経営的なメリットも大きいと考えられ、「特別の関係の見直し」も訪問看護ステーションを持つ病院にとっては大きな朗報と思われます。特に着目すべきは『入院時支援加算』に200点という高い点数が設定された事で、入院患者に対する支援と地域の関係機関との連携の重要さを示しているものと思われます。
 改定後の動向として、7月18日に開催された第369回中医協の総会で2018年度診療報酬改定に関する調査項目が発表されました。18年度は急性期一般入院基本料、地域一般入院基本料等の評価体系の見直しの影響等の4項目について、10月から12月にかけて調査が実施されます。この結果をもとに次期改定に向けて評価の見直しが検討されるみこみです。
 また厚生労働省は、医療従事者(特に医師)の働き方改革への対応について、2018年度改定では「診療の質に影響を与えない範囲」を前提として進めたが、今後は「働き方改革に応じた報酬」を検討していく必要があるという見解を示しています。

 

 次回は、2018年度診療報酬改定の全体像と要点から、今後の病院経営における視点について考察します。