未収金の回収方法として

Ⅰ.自助努力による回収

患者の所在(住所、電話番号)が分かるのなら、病院職員が患者に頻繁に電話するなり訪問するなり、支払の督促をするのが最もシンプルな方法です。場合によっては、病院からの内容証明郵便によって、「法的手段をとることも辞さない」という強い姿勢を示し、患者に粘り強く督促することが一番効果的であると思われます。

 Ⅱ.法的手続きによる回収

病院職員が粘り強く督促をしても支払おうとしない患者の場合、裁判所へ診療報酬の支払いを求める法的手続きをとるしかありません。裁判所を利用する方法としては、以下3つの方法があります。

-1) 通常の民事訴訟 (民事訴訟法§138以下)

求める請求金額に対して手間と費用と時間もかかることから、相当高額な診療報酬の未払いがあり、患者がある程度の支払い能力がある場合にしかとれない手続きです。

-2)支払督促の申し立て(民事訴訟法§383以下)

①病院側が患者の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に対して、支払督促の申し立てを ます。

②簡易裁判所から患者に対して支払督促が送達され、患者に送達したとき効力が生じます。

③支払督促の送達を受けた時から2週間以内に患者が督促異議の申し立てをしないときは、病院は支払督促に仮執行宣言を付けることを申し立てることができます。

*支払督促は、患者に送達されなければ効 力を生じないので、患者の住所など患者本人が現在どこにいるのか明確でなければなりません。したがって、患者が行方不明になってしまった場合については、支払督促の手続きをとることができなくなります。

-3)少額訴訟手続き(同法§368以下)

60万円以下の金銭支払いを求める請求についての特別請求手続きであり、簡易裁判所に訴えます。

①原則として1回期日で審理が集結する特別な訴訟手続きです。

②証拠が即時に取り調べうるものに限定されます。

③判決が弁論終結後、直ちになされます。少額な金銭請求について、迅速な解決を図ることを可能にした手続きです。

(異議申し立てに限られ、控訴はできません)

④仮執行宣言が付されて支払督促が債務者に送達されてから2週間以内に、患者から督促異議の申し立てがされなければ、支払督促は確定判決と同一の効力をもつことになります。

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Ⅲ.保険者徴収

医療機関における患者自己負担金の回収は、診療報酬請求の一部を保険者から代行する、という意味があります。

健康保険法第74条第2項は

「保険医療機関又は保険薬局は、前項の一部負担金の支払を受けるべきものとし、保険医療機関又は保険薬局が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお療養の給付を受けた者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないと

きは、保険者は、当該保健医療機関又は保険薬局の請求に基づき

、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。」

と定め、医療機関または薬局が条件を満たせば、未収となった患者自己負担金の回収を保険者に求める事が出来る、とされています。

 

しかし、保険者徴収の対象が原則として

①患者自己負担金相当額が60万円を超えるもの

②被保険者の世帯が保険料(税)の滞納処分を実施する状態にあるもの

と限定されている事。

保険者徴収の前提となる医療機関の回収努力として、患者の療養終了後(一連の療養が終了して患者に診療報酬の一部負担金の支払を求めたとき)から、

①月1回以上電話等で催促し、その記録を残していること

②3カ月以内及び6カ月経過後に内容証明郵便で督促状を送付し、その記録を残していること

③6カ月経過後に少なくとも1回以上被保険者の自宅を訪問し、その記録を残していること

と、厳しい条件が求められている事。

以上、保険者徴収の対象と医療機関の回収努力という2点から、保険者徴収は、未収金回収の方法として利用されている事が少ないのが現状です。