「高額療養費の現物給付化」の周知・活用

医療機関を悩ませている大きな問題の一つとして、未収金問題(患者自己負担金の未払い)があります。日本病院会が実施したアンケート調査によると、2012年度の一病院当たりの未収金平均額は年間1,108万円だそうです。

近年、不況による失業や保険料の高額化等により、患者自己負担金の未払いは増加傾向にあり、病院経営の観点から見過ごせない問題となっています。患者が診療を受けても治療費を支払ってくれない場合、どうすればいいのでしょうか?

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「財布を忘れました」とか「お金が足りないので次回一緒にまとめて払います」とか、このように、支払う意思と支払う能力がある患者に対しては、後日支払う旨の誓約書等を一筆書いていただくことで、ほぼ回収することができます。

・・・が、

・支払う能力があるのに支払う意思がない患者(悪質滞納者等)、

・支払う意思があっても支払う能力がない患者(生活困窮者等)

がいることも事実です。

 

そこで、今回は、厚生労働省公表による「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」を基に、未収金(診療報酬の未払い)問題について考えてみたいと思います。↓

医療機関の未収金問題に関する検討会報告書

1.診療報酬請求権とは(根拠)

診療報酬請求権とは、診療に対する報酬を請求する権利のことです。医療機関から支払基金等に請求する権利も、患者に対して請求する権利も、同じく診療報酬請求権といいます。本稿では、患者に対する診療報酬請求権について、みていきます。

 

診療報酬請求権は、保険診療においては、保険法(健康保険法及び国民健康保険法)

上の法定権利として、自由診療(保険適用外の診療)においては、診療契約上の債権して発生します。

保険診療、自由診療いずれも、患者に診療を行った報酬(対価)として発生する権利で、放置していたら時効によって消滅してしまいます。診療報酬請求権が時効消滅すると、医療機関は永遠に未収金(診療報酬未払い金)を回収できなくなります。

では、未収金は、いつまでに回収しなければならないのでしょうか。時効について、みてみましょう。

 

2.診療報酬請求権の『時効』

診療報酬の患者自己負担金は、原則として診察が終わればいつでも請求でき、請求した時から3年で時効民法§170)となり、診療報酬請求権は消滅します。

3年間何もしないと時効により消滅してしまいますが、これを防ぐことができるのでしょうか。

民法は、時効を完成させないために、「時効の中断」を認め(民法§147)、

①請求、②仮差押え、仮処分など、③承認、という三つの中断事由をあげています。

ここでは、時効を中断させることができることだけ知っていただければ充分ですので、詳細は割愛させていただきます(詳細な手続きは専門家にご相談ください)。

未収金は時間が経てば回収しづらくなるどころか、時効によって消滅してしまうので、なるべく早めの回収が望まれます。

次に、一般的な未収金の回収方法について、みてみましょう。