2018年度診療報酬改定の全体像と要点について~ 2025年を生き抜くためのポイントを読み解く~(1)

1.はじめに

 2月7日に中央社会保険医療協議会より2018年度診療報酬改定の答申書が厚生労働省に提出されました。今改定は実質的に2025年に向けた最後の医療・介護の同時改定と考えられ、方向性が明確に整理された改定内容となりました。
 主な内容は、地域包括ケアシステム構築の推進に関連する かかりつけ医機能の評価拡充、入退院支援や医療連携の強化等のほか、医療従事者の働き方改革の推進、第3期医療費適正化計画による医薬品適正使用等が盛り込まれました。
 入院医療に関しては、「機能分担」の強化と将来の医療ニーズへの対応を目的に入院基本料が基本部分と診療実績による2階建ての評価に再編・統合される等、全体的にアウトカム評価が強化され、2016年度に引き続き厳しい内容の改定となりました。

 これから医療機関をとりまく状況が更に厳しくなっていく中、どのような視点を持って病院経営に臨めばよいでしょうか。
 今回は、前回改定までの流れをふまえ、急性期病院に関わる改定内容を通して、地域医療構想の観点等から今後の病院経営に必要な視点について考察していきたいと思います。

2.2016年度改定までの流れと政策の動向

 診療報酬の改定は2年ごとに行われ、6年に1回介護報酬の改定と重なります。直近の同時改定は2012年で、同年2月に閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱」を念頭に置いて、超高齢化社会を迎える2025年のあるべき医療と介護の姿(図1参照)の実現に向けて「医療と介護の役割分担の明確化と地域における連携体制の強化、在宅医療の充実」という長期的な視点が示されました。

メディカルニュース24 図1

 この改定から、入院医療から在宅医療へのシフトが本格的に進行し、2025年に向けた「病床再編」の第一歩として7対1入院基本料の適正化(平均在院日数19日から18日以内への変更等)が行われました。

 2014年の診療報酬改定では、病床機能分化の強化として7対1入院基本料の要件が厳格化され、(重症度・看護必要度の見直しや在宅復帰率の導入等)、7対1病棟の絞りこみが進められました。
 同年6月に医療介護総合確保推進法が成立し、地域ごとの2025年における医療提供体制のビジョンである ※①地域医療構想の策定と、都道府県における医療機関の機能分化の促進を目的とする病床機能報告が制度化しました。
 しかし依然として病床の機能分化は進展しておらず、一層の取り組み強化が必要として、※②2016年の診療報酬改定で7対1入院基本料の更なる厳格化が行われました。

メディカルニュース24 表1
3.急性期の入院医療に関わる改定について

 今改定では、医療機能の分化・強化が重点的に行われ、一般病棟入院基本料が医療機能を基軸とした評価体系に再編・統合されました。
 ここからは、その主な概要についてみていきたいと思います。

①一般病棟入院基本料の評価体系の再編・統合について

 一般病棟入院基本料については、従来から医療機能や患者の状態に応じた評価を適切に行うべきであると議論されてきました。特に7対1相当の医療内容を実施している10対1届出医療機関が一定数存在し、7対1と10対1の患者像に重複している部分がある事が問題視されました。
 7対1届出病床数は、2016年度改定による基準の厳格化を受けて全体的に2017年4月時点で1万1900床減少しましたが、実際には病院内の一部の7対1病棟を、地域包括ケア病棟入院料等の急性期以外の病棟に転換した病院が多く、7対1から10対1病棟に転換した医療機関も少ない状況です。7対1と10対1の点数差は約200点余りで、200床病院で年間推計1億2千万円の減収と試算されています。こうした報酬面の影響の大きさが7対1から別の入院料への転換を妨げているものとし、7対1と10対1の間に中間的な水準の評価を設ける必要があると考えられました。
メディカルニュース24 図2

 また入院患者の疾患や年齢構成の将来推計では、より高い医療資源投入を必要とする悪性腫瘍等の疾患は減少し、肺炎、心疾患、脳血管疾患等の中程度の医療資源投入が必要な疾患が増加するものと考えられています。
 この事から現行の7対1病棟が将来の医療ニーズの変化に弾力的かつ円滑に対応できるよう、入院医療を評価する報酬体系もそれに相応しい体系にしていく必要があるとして、一般病棟入院基本料の評価体系が見直されました。
 その結果、入院医療の評価は急性期医療、急性期医療~長期療養、長期療養の3つに分類され、従来の7対1、10対1入院基本料は「急性期一般入院基本料」に、13対1、15対1入院基本料は「地域一般入院基本料」に再編・統合されました。(図3参照)

メディカルニュース24 図3

 新しい入院基本料の評価体系には、看護職員配置等の基本部分と実績に応じた段階的な評価部分との組み合わせによる評価体系が導入されました。
急性期一般入院基本料は、入院料1~7の7段階で、入院料1には現行の7対1の要件が適用され、入院料7に10対1相当の要件が適用されます。中間的な評価の入院料2~6は「看護配置10対1以上」(7割以上が看護師)、「平均在院日数21日以内」を要件とします。
 入院料1の点数は現行の7対1と同じ1591点ですが、「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合の基準が30%に引き上げられました。
 入院料2~6についても、実績部分は重症度、医療・看護必要度の評価による該当患者割合が用いられ、段階的に点数が設定されています。
 また、在宅復帰率は名称を「在宅復帰・病床機能連携率」に変更し、介護医療院も「自宅等」の対象となりました。

メディカルニュース24 表2

②一般病棟入院基本料の重症度、医療・看護必要度の改定について

 重症度、医療・看護必要度については、2018年度改定でも適切な評価方法を検討する必要があると考えられました。
 厚生労働省は、重症度、医療・看護必要度の測定に対する看護師の負担軽減等事務の効率化と合理化の観点から、定義、算出方法等の違いについて一定の条件を設定した上でDPCのEF統合ファイル(DPC/PDPSにおいて出来高算定の診療行為をどれだけ実施したかのデータ)の活用を提案しました。データの活用には、現行方式での測定との齟齬を検証する事が必要との意見があり、現行方式による測定とEF統合ファイル判定の該当患者割合の比較検証が進められました。結果は、現行方式による該当患者割合28.8%、EF統合ファイル判定による該当患者割合23.3%でした。
 DPCデータの活用には一部強い反対意見もありましたが、診療側も支払い側(健保連代表者)も賛同の意を示し、従来の方式を重症度、医療・看護必要度Ⅰとし、DPCのEF統合ファイルを用いた方式を重症度、医療・看護必要度Ⅱとして再編されました。

メディカルニュース24 表3

 急性期一般入院基本料2、3の重症度、医療・看護必要度は基準Ⅱの使用が原則ですが、2018年3月31日時点で許可病床数200床未満の病院で7対1一般病棟入院基本料の届出を行っている病棟については、経過措置として2020年3月31日までの間に限り一般病棟用の重症度、医療・看護必要度Ⅰを用いる事ができます。
 その他、身体疾患を持つ認知症患者やせん妄患者の入院治療の負担が考慮され、重症患者に「A得点が1点以上かつB得点が3点以上で『診療・療養上の指示が通じる』又は『危険行動』のいずれかに該当する場合」が追加されました。またC項目のうち「開腹手術」の基準該当期間が5日間から4日間へと短縮されました。

 次回からは、その他の改定項目について2回に分けて説明いたします。

  
※①地域医療構想と病床機能報告制度については『医療制度改革総まとめー2025年はもう始まっているー』をご参照ください。
※②2016年の診療報酬改定における7対1入院基本料厳格化の内容は、『2016年度診療報酬改定「看護必要度の見直しと7対1病棟への影響度」~2025年を見据えた病棟再編のポイントを探る~』をご参照ください。