4.看護職員の勤務環境改善の取り組み
前述のとおり、医療機関の職員の中でも、特に看護職員は夜勤・長時間勤務の負担が大きいという特徴があります。そこで、日本看護協会は、2013年2月、「夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を策定しました。このガイドラインは、
① 看護職員の心身の健康の保持増進は、「組織」と「個人」による取り組みによって実現される。
② 看護職員の心身の健康の保持増進には、夜勤・交代制勤務の負担を軽減していく対策が欠かせない。
③ 夜勤・交代制勤務の負担軽減は、個々の職員や職場全体がより快適な方向に向かうためのワーク・ライフ・バランス推進の一環として行われる必要がある。
という3つの基本理念に沿って、職場環境を見直し、看護現場のマネジメントや職場環境の向上について、各病院に改善の指針を提示したものです。ガイドラインでは夜勤・交代制勤務の勤務編成の考え方として、看護職員の健康・安全・生活への影響を少なくする観点から「勤務編成の基準」11項目が示されています。(図5)
当ガイドライン策定後の「勤務編成の基準」11項目の実施状況について、日本看護協会が2013年度および2014年度に行ったガイドラインの普及に関する実態調査によると、「勤務編成の基準」に沿った勤務体制見直しの取り組みが進んでおり、ガイドライン公表が取り組みの契機となったことも確認されています。
また、厚生労働省も2013年2月に公表された「医療分野の『雇用の質』向上プロジェクトチーム報告」に基づき、都道府県や日本医師会・日本看護協会と協力して、看護職員をはじめとする医療従事者の雇用の質向上に取り組んでいます。このプロジェクト報告をふまえて、2014年10月には改正医療法が施行され、各医療機関がPDCAサイクルを活用して計画的に勤務環境改善に取り組む「勤務環境改善マネジメントシステム」が創設されました。このシステムの創設に伴い、各都道府県に勤務環境改善支援センターが順次設置され、勤務環境改善に取り組む医療機関に対して支援活動を行っています。あわせて、厚生労働省がウェブサイト「いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ) 」を設置し、勤務環境改善に関する法令や通知のほか、都道府県や関係団体および医療機関の施策や事業の内容・事例集などの情報を発信し、「勤務環境改善マネジメントシステム」の普及と医療機関の勤務環境改善を目指しています。(いきサポのURL http://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/ 詳しくは、メディカルニュース第10号の特集をご覧ください。)
このように近年、国や日本看護協会などの医療関連団体により指針や制度が整えられつつあり、医療機関の勤務環境を向上させるための取り組みが進んでいます。しかし、医療従事者が長期に渡りモチベーションを高く保ち働き続けることができる勤務環境を構築するためには、制度・環境の充実による「働きやすさ」の向上と併せて、「働きがい」を高めるための組織マネジメントの重要性にも目を向ける必要があると考えます。
次回は、「働きやすさ」と「働きがい」の違い・関連性と「モチベーション」について考察してみたいと思います。