新たな地域医療の連携に向けて~地域医療連携推進制度って何(3)~
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3 制度の概要とメリット

  ここで、地域医療連携推進法人制度の概要について確認しておくことにします。より詳しい内容は、厚生労働省作成の2015年12月11日付「地域医療連携推進法人の創設について」http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/jjkaigou/dai28/siryou13.pdf
をご覧ください。

 主な特徴は、次の通りです。

①地域医療連携推進法人は、一般社団法人であり、設立には都道府県知事の認定を受けなければなりません。
②地域医療連携推進法人に参加できる法人は、病院など医療機関を開設する医療法人等の非営利法人です。介護事業を行っている非営利法人を加えることもできます。参加した非営利法人は、地域医療連携推進法人の社員として運営に参画することになります。社員は1参加法人につき1個の議決権を持ちます。
③地域医療連携推進法人の最高議決機関は社員総会です。
 
 社員総会では、
ⅰ)統一的な医療連携推進方針の決定
 事業統合ではなく、「連携」を強調するもので、この方針をもとに参加法人の病床機能の分化や連携を推進。
ⅱ)医療連携推進業務等の実施
 具体的には、病床再編、患者情報の一元化、医師・看護師などの共同研修、医薬品などの共同購入、医療機器等の共同利用、病院開設、資金貸付、医師の配置換え、救急患者受入ルールの策定など。
ⅲ)参加法人の統括
 参加法人の予算、事業計画の決定、銀行からの借り入れなどに関与し意見を述べる。ただし、関与の仕方としては、意見聴取・指導を行うという一定の関与の場合と、協議・承認を行うという強い関与の場合のどちらにするかを事項ごとに選択。
などが行われます。

④地域関係者で構成する「地域医療連携推進評議会」の設置が求められています。これは、地域医療連携推進法人の運営のために意見を述べるというものです。
⑤地域医療連携推進法人が想定する圏域は、地域医療圏(すなわち2次医療圏)です。これは、地域における医療・介護サービスのネットワーク化を図ることを重視したものです。

 地域医療連携推進法人を設立するメリットは、設立によって複数の医療機関をグループ化し、相互に連携させて統一的な経営を行うことで、医療機関の機能の分担、業務の連携が可能となり、地域医療構想の達成を図ることができる点です。
 また、地域医療構想の推進に必要であるとして都道府県知事が許可をすれば、地域医療連携推進法人内で、病院間の病床の融通ができることも大きなメリットとされます。仮に病床過剰の圏域でも、都道府県知事が認めれば、病床の移動が可能となるのです。

4 地域医療連携推進法人設立に向けた動き

 地域医療連携推進法人制度が施行されるのは、2017年4月からです。施行に向けて、法人設立に向けた動きがはじまっています。そのいくつかをご紹介します。

 厚生労働省の2016年3月23日付「地域医療連携推進法人の設立に向けた地域での動き」によれば、具体的に検討されている事例として、以下のようなものが挙げられています。

①大学病院、市立病院、独立行政法人立病院等が、病院同士のグループ化によって、機能分担、業務連携を検討
②中規模の医療法人等が、地域の中堅病院の間で、診療科目の分担、職員の相互交流等の連携を検討
③医療法人、社会福祉法人等が、総合病院、診療所、介護施設等を中心に、相互的なコールセンターを設置し、連携促進を検討
④がん治療を専門とする医療法人が、薬剤の共同購入や高額医療機器を使った治療の連携等を検討
⑤自治体病院と医療法人が、自治体病院の改築にあわせ、地域の病院再編のため、制度の利用を検討
⑥中規模の医療法人等が、患者の電子カルテの統一を中心として連携を検討
⑦中規模の医療法人等が、入院中の患者等への給食サービスの共同化を中心として連携を検討

  制度創設に先立つ2014年10月、岡山市内の6主要病院を非営利ホールディングカンパニーで束ねるという「岡山大学メディカルセンター構想」を岡山大学が発表したことは注目を集めました。2016年4月、岡山大学は、一般社団法人OUMCを立ち上げ、将来的に地域医療連携推進法人への移行を目指すべく、各病院との調整が続いています。
 同じ2016年4月には、札幌市で2病院を経営する社会医療法人社団カレスサッポロと北海道医療大学が、地域医療連携推進法人を設立する合意書を取り交わしました。設立の目的は、医学教育の質的向上と、予防医学から疾病治療、リハビリテーション、緩和ケア、在宅医療、地域包括ケアシステムの確立に加えて、高度医療、救急医療、地域医療へ積極的に取り組み、地域社会の発展に貢献していくこととしています。
 鹿児島市でも、乳がん専門の相良病院を経営する社会医療法人博愛会と泌尿器科専門のにいむら病院を経営する医療法人真栄会が、将来的に地域医療連携推進法人の設立を見据えて、2016年4月から業務提携をスタートさせました。提携の具体的な中身は、本部機能を統一する、薬剤や医療機器の購入を一本化してコストを削減する、2つの医療機関で診療を分担し、相互に医師が支援しあうこととしています。

 地域医療連携推進法人を設立しようという動きの背景は様々ですが、その特徴のひとつは、大都市はともかく、地方において人口及び患者数の減少が続いており、個々の医療機関が単独で経営を存続させることは限界で、共倒れになりかねない。そこで、これまでも行われてきた医療機関同士の業務提携(例えば、患者の紹介)を発展させて地域医療連携推進法人を作ろうというものです。同じ医療圏の中で、専門領域の違う医療機関が提携すれば、患者の紹介を行うことができ、それぞれの医療機関の専門性を高めて患者を確保し、収益性も高まることが期待されます。地域の医療機関同士により、これまで自然にお互いの機能分化、役割分担が形成されてきた状況については、検討会でも指摘があり(第9回検討会、大道委員発言)、この状況を発展させて地域医療連携推進法人の設立に繋げようという動きがみられるのです。