2 制度創設の経緯
新たな法人制度を作ろうという、本格的な議論がはじまるきっかけとなったのは、2014年6月の「日本再興戦略(改訂2014)」において、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)を創設する。」との内容が盛り込まれたことです。その後、厚生労働省の「医療法人の事業展開等に関する検討会」(以下、「検討会」といいます。)において検討が行われました。
当初は、「非営利ホールディングカンパニー」を作ろうという形から議論がはじまりました。ホールディングカンパニーとは、一般には、他の会社を支配するために、その会社の株式を取得する目的で作られる株式会社のことをいいます。ホールディングカンパニーは、営利を目的とする株式会社の経営に役立てるための手段として考えられたものです。これを、非営利を目的とする医療法人に応用しようというものでした。この形をとると、参加しようと集まった、それぞれの医療機関がグループを作り、その上にホールディングカンパニーが存在することになります。そして、ホールディングカンパニーがいわばセンターとなって、グループ内の医療機関を一体的にまとめ、意思決定や統制を行うことになります。
また、非営利ホールディングカンパニーの規模について、アメリカの例を参考にして、地域医療圏を越える、例えば人口100万人の大規模な範囲をカバーする事業体にするという構想も提案されました。
上記のような形をとると、ホールディングカンパニーが、グループ内の医療機関の統制を行いつつ、各医療機関は独立して経営を行うことができます。ひとつひとつの医療機関がバラバラに経営を行うよりは、グループとしての経営力が大きくなるというメリットがあります。
しかし、「ホールディングカンパニー」という名称自体が、もともと営利目的の株式会社のしくみであることから、いくら「非営利ホールディングカンパニー」といっても、非営利を目的とする医療機関にはなじまないという批判がされました。
次に、アメリカの例を参考にした大規模な事業体とする考えについては、そのまま導入するのは日本の医療提供体制とは合わないという批判がされました。
結局、「非営利ホールディングカンパニー」という名称の制度を作るという案は否定されました。
その後、検討会は、設立する法人を、医療機関の一体化や統制をはかる大規模な事業体ではなく、地域における医療・介護サービスのネットワーク化を図るための制度と再構成して検討を進めました。そして、最終的に法人の名称は「地域医療連携推進法人制度」に決定しました。法人設立の趣旨は「医療機関相互の機能の分担および業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢」であるとし、「競争よりも協調を進め、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保すること」とされました。2015年2月9日、検討会は、地域医療連携推進法人制度の創設についての取りまとめを行い、社会保障審議会医療部会で了承された後、国会に提出され、医療法改正第70条として成立しました。
次回は制度の概要と最近の動きについてご紹介いたします。