組織マネジメントの重要性とリーダー育成~職場環境改善のための組織マネジメント(3)~

組織のリーダー

4.組織マネジメントの重要性
組織とは、「複数の人々の集まりで、その人々の協働によって、より効率的に共通の目標を達成し、さらに、そこに所属する人々の得るメリットを極大化させるための集団」と定義づけられます。
いかなる組織も特定の目的を持っており、組織そのものは、目的なしには存在しません。また、経営者(トップ)からの一方通行ではなく、経営者と職員双方向のコミュニケーションを通じて目的を達成する(結果を出す)というのも組織です。その目的達成に向けて、複数の人々で同一の行動をするために組織マネジメント機能が不可欠なのです。
医療機関のような非営利組織であったとしても、特定の目的を人々の協働を通じて達成していく持続的な組織体である限り、マネジメントをしなければなりません。 医療サービスという無形の見えない部分にどれだけマネジメントするのかという課題がありますが、その課題克服のためには、まず職員間のコミュニケーションが必要となってきます。見えないところを見えるようにする、あるべき状態を見える状態にするのがコミュニケーションです。
例えば、辞める人を減らすためにはどうすればよいかという根本的解決と、辞めると言いそうな人との関係改善を図るという早期対応を考えなければ、離職者を減らすことは困難です。
先ずは、上司と部下、同僚など職員同士お互いを理解した上でないと組織マネジメントはできません。そのためには「職員の納得」というプロセスを得るためのコミュニケーションが必要となってきます。「職員の納得性」がないと組織マネジメントは成立しません。即ち、病院という多職種協働の組織におけるマネジメントが経営そのものであり、個人差がある複数の人々が集まる組織だからこそ、マネジメントが求められるのです。成長する組織、変革できる組織をつくるには、どうやって「職員の納得」とモチベーションを維持し、マネジメントするかが非常に重要となってきます。

不思議なもので、組織はリーダー(管理職)で決まります。リーダーは自然と組織文化やトーンを決めているもので、部下をやる気にさせるのも、部下のやる気を奪うのもリーダーです。そして「この人のためだったら頑張ろう」という部下から自然にモチベーションが湧いてくるのが理想です。言い換えれば、理想のリーダーシップとは組織が大きくなればなるほど、如何に部下や同僚を盛り上げるかであり、重要なのはリーダーたる管理職が方向づける、組織文化や雰囲気づくりなのです。

続いて、組織活性化のためのリーダー育成についてみていきます。

5.組織活性化のためのリーダー育成
仕事は、互いの成長のため、組織を通じてやりがいを実現し、経済的にも満足できるようにするというものです。そういう情勢を共有できることが、モチベーションの源泉にもなります。職員のやる気がなければすべての組織活動や組織活性化に良い結果は生まれません。何のために仕事しているのか、そのために何をすべきなのかを自ら考え、行動できる組織風土が必要であり、職員が日常の業務だけでなく、そういうことをしっかり考えることで、自己実現の欲求が高まり、高い目標にチャレンジするようになります。
つまり、仕事を通じてチームで喜びを分かち合い、成長できる組織をつくりあげることが大切なのです。重要なのは、チームの相乗効果を生みだす組織風土であり、医療機関が現在の厳しい環境の中で生き残るには、全職員が病院の目指す方向性を理解し、行動することが欠かせません。

職員が「自ら考え」「自ら発言」し「自ら行動」して「自ら反省する」ことを実践し、「考える力、感じる力、気づく力などを養う」ようにすることです。日々の忙しい中でも病院の理念とバリューに共感し、自主性と「内発的動機付け」に基づいて行動している職員が、褒められ承認される組織風土をつくる必要性があります。「内発的動機付け」とは、自分が納得して行動に移すというように、本人の内面から発生する動機づけ(モチベーション)を言います。
また、職員の認められたい、承認されたいという「承認欲求」や、自分の能力を引き出し創造的活動がしたいという「成長欲求」を刺激することで、仕事そのものへの満足度を高め、継続性あるモチベーションにつなげることができ、ひいては職場環境を改善し人材の定着と離職を防止することができます。

特に、医療機関のように「人」をベースにする組織においては、職員のプロフェッションとしての「承認欲求」や「成長欲求」にフォーカスすることが、内発的動機づけを引出し、働きがいやチームワーク改善につながります。
その内発的動機付けを引き出し、人材を育成するためには、リーダーたる管理職が、部下のプロとしての成長を促し、プロとして成長できる環境を整備していく組織風土を築いていくこと、病院の理念をしっかりと認識し、患者志向への意識改革と、患者志向への業務プロセスへ改革することなのです。
そのためには、リーダーから日頃の業務でのフィードバックが適時、適切に行われていることが大変重要であり、それにより「職員の納得」を得ることができ、それを病院経営にフィードバックする体制の構築が望まれます。

人を育てること、人に教えることは、管理職自らが成長するチャンスであり、苦痛でもありますが、人のいいところは、見ようと思わなければ見えてきません。また、組織として求める人材は、組織の中で働く意味や組織の方向性を理解し、自主的に動くことができる職員です。病院が大切にしている価値観に共感し行動する職員がたくさんいれば、それが病院の差となって現れてきます。

「よい医療」は「よい病院経営」がなくては成り立ちません。「よい病院経営」を成り立たせるには、患者から選ばれる病院になることです。