2016年度診療報酬改定「看護必要度の見直しと7対1病棟への影響度」~2025年を見据えた病棟再編のポイントを探る~(4・完)

MN18(4)6.さいごに

 さいごに、2025年を見据えた病棟再編のポイントについて見てみます。

 周知の通り、昨今の医療情勢の動向は「地域包括ケアシステムの構築」が前提としてあります。今回の改定も2025年を見据えた地域包括ケアシステムを構築するための「病床機能の分化」と「地域完結型医療への移行」を推し進める内容となり、それらに関する項目については手厚い配分がなされています。

 そんな中、医療機関にとっては、地域における医療ニーズを見極めて、自院の病床機能の担い方や診療体制のあり方を取捨選択し、今後の病院運営の方向性を明確するための大きな転換期を迎えていると言えます。

 看護必要度の厳格化に伴い、高度急性期を目指して機能の拡充を図るのか、回復期や慢性期医療に方向転換をするのか、院内において病棟再編を検討する医療機関は多いと思いますが、いずれにせよ、7対1病棟を維持することは、今後もさらに難しくなることは必至です。
 7対1から他病棟への転換を図るための経過措置的な内容が色濃く反映した今改定において、次期改定までの2年間という限られた期間に、いかに「計画性」をもって自院の将来像をイメージしながら、病棟再編を検討していけるかが重要なポイントになると言えます。

 その際には、今改定の基本的視点にあるように「地域で暮らす国民を中心とした、質が高く効率的な医療を実現」するための「患者本位」の医療体制を実現できるよう、自院の生き残りをかけて「競合」しつつ、地域における総合的なチーム医療を実現するために「協働」する視点が求められるでしょう。

 

<参考文献・URL等>
・平成27年9月11日 第88回社会保障審議会医療保険部会 資料1
・2016年3月4日版 平成28年度診療報酬改定の概要(厚生労働省保険局医療課)
・2016年3月4日版 平成28年度診療報酬改定の概要(厚生労働省保険局医療課長宮嵜雅則氏)
・第1部平成28年度診療報酬改定における主要改定項目(厚生労働省)
・平成27年12月7日 平成28 年度診療報酬改定の基本方針(社会保障審議会医療保険部会)
・2016年3月30日 日経メディカルAナーシング「診療報酬改定で4月から看護現場はこう変わる(福井トシ子氏インタビュー記事)」
・https://www.med.or.jp/nichiionline/article/004234.html
・http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106421.html
・https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/53731/Default.aspx
・http://www.medwatch.jp/?p=7579
・http://www.cabrain.net/management/article/48335.html 

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■□ 編集後記 □■
 4月に発生した熊本県を中心とする大地震により、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 この地震により、建物や設備等の損傷を受けた現地の医療機関においては、充分な治療を行うことができず、負傷者の受け入れや入院治療を継続することに困難をきたしている医療機関も多いようです。
 そんな中、あるニュース記事によると、被害を受けた病院から100名を越える患者の受け入れを行った病院があったそうです。この病院では、患者の受け入れにおいて、病棟だけでなく介護老健や老人ホーム等の施設も活用したとのことです。
 日頃からあらゆる状況をシミュレーションし、院内における受け入れ体制と他病院との連携体制を確立できているからこそ、このような受け入れ対応ができたのだと思います。
 メディカルニュースの中でも触れましたが、昨今の医療情勢の動向は、地域包括ケアシステムの構築が前提としてあります。
 これまでの医療機関完結型医療による病院や施設間の「壁」を取り払い、お互いを「受け入れる」地域完結型医療によるシームレスな医療連携を実現し、地域住民にとって安心・安全な医療が提供されることに期待したいものです。

■□ 筆者のつぶやき □■
 自宅から最寄り駅までの道のりに、色鮮やかに咲く紫陽花(あじさい)に目を奪われました。
 紫陽花には、小さな花が寄り添ってひとつの大きな花を作り上げていることから、「団結」「仲良し」「家族団欒」「強い愛情」等といった花言葉があるそうです。うす暗い梅雨空の中でも、一際強く、美しく咲き誇るその姿に、私たちは魅了され、明るい気持ちを与えてくれます。
 私たちの医療業界も、今まさに梅雨空のごとく、様々な課題や難問が絶え間なく降り注いできています。それらを解決する糸口のひとつとして、地域内における強固な「団結力」が必要であると思います。
 筆者もこの激動の医療業界に身をおく人間として、紫陽花のように悪天候の中でも強く咲き続けられるよう、見識や技術を磨き、努力していきたいと思います。
 気候の変動が激しい季節です。本稿をご覧の皆様も、どうぞ体調管理にお気をつけくださいね。