5.医療機関への影響について
(1)7対1病棟を維持する場合
上述の通り、今回、看護必要度の該当基準自体が、今まで以上に重症患者を反映した指標へと見直され、A項目(モニタリング及び処置等)とB項目(患者の状況等)に加え、新たにC項目(手術等の医学的状況)が設けられました。また、重症患者の対象を、これまでの「A項目2点以上かつB項目3点以上」に加えて、「A項目3点以上、またはC項目1点以上」に拡大されています。(※図2参照)
これにより「重症」と判断される患者数が増加するため、重症患者割合の要件が15%から25%以上に引き上げられた訳ですが、許可病床数が200床未満の医療機関であって、病棟群単位の届出を行わない場合においては、経過措置として2018年3月31日までに限り、23%以上に緩和されます。
手術件数を多く実施している医療機関にとっては、この要件は容易にクリアできるとの見方もありますが、これまで比較的算定しやすかったB項目(患者の状況等)の要件が見直されたことにより、やはり新基準を満たすことが難しい医療機関も多いようです。
また、これらの見直しに対応するため、重症患者の少ない医療機関や、集中治療室にがん等の術後救急を受け入れている医療機関においては、7対1病棟を維持することを目的として、ICUやHCU等を廃止し、重症患者を一般病棟に移そうとする医療機関もあるようです。このことから、病棟看護師の負担が増え、医療の質や医療安全面における患者本人へのしわ寄せが懸念されるとの声が出ています。
※図2『2016年3月4日版 平成28年度診療報酬改定の概要(厚生労働省保険局医療課)』より転載
(2)他病棟への転換を図る場合(10:1病棟等への移行)
一方、7対1の新基準を満たすことできず、10対1病棟や地域包括ケア病棟等への病棟転換を図る場合について見てみます。
10対1入院基本料では、今改定で看護必要度加算の点数配分が引き上げられており、さらに、2016年 4月1日から2年間を限定として、病棟群単位で7対1と10対1の両入院基本料の届出が認められています。
また、地域包括ケア病棟では、包括範囲から手術や麻酔が除外され、中小病院等では同病棟への転換を進める医療機関も少なくないと見られています。
このように10対1や地域包括ケア病棟への移行を推進するための手厚い配分がなされており、7対1から10対1への病棟転換の際に生じる雇用の急激な変動を段階的に緩和することを目的として、両病棟を病棟郡単位で有することも可能となっています。
しかし、例えば7対1から10対1への転換を図った場合、病院収入が大幅に減少する上に看護師が過剰となるため、人件費等の削減を行わざるを得なくなります。
当然、簡単には行えないため、病棟郡単位での届出による段階的な人員整理も必要ですが、2017年4月1日以降は、7対1病棟を60%以下にしなければならないという制約と、10対1への病棟転換を前提とした2年間という経過措置的な取り扱いであるため、10対1への移行になかなか踏み切れないとの見方もあるようです。
また10対1となれば、看護部の現場からは、今までと同じ仕事を少ない人員で行わなければならず、救急患者等の受け入れ制限や従来の7対1並の人員配置を求める声が上がる可能性もあります。
手厚い人員配置に慣れてしまっている上に、平均在院日数の短縮化や医療の高度化等により現場の煩雑さが増大している中で、10対1の看護体制を維持することにも大きなリスクを伴うのではないかと考えられています。(注3)
以上、「看護必要度の見直し」について見てきましたが、次回は、2025年を見据えた病棟再編のポイントについて見ていきます。
<引用文献・URL等>
・注3)http://www.cabrain.net/management/article/newsId/48089.html