3.7対1病棟に対する医療機関の課題
7対1看護体制の病棟が増えすぎたのは、これまでの政策誘導が、医療機関にとって看護師の数さえ確保できれば手厚い診療報酬が得られ、増収増益に繋がるといった収益面ばかりに目が向けられてしまうようなものであり、地域住民に対して最適な医療を提供するための医療機関として担うべき機能や役割に対して焦点を当てることができないものであったことが原因として考えられています。
このような背景から、7対1病棟を削減して、後期高齢者人口が急増する2025年へ向けて充実させることが必要な病床機能を確保することを目的として、2014年度の診療報酬改定において算定要件が見直されました。
具体的には「平均在院日数の算定要件の見直し」や「重症度、医療・看護必要度の見直し」、「在宅復帰率75%以上」等といった要件を設定し、実質的に急性期医療を行なわず、軽症患者を多く抱えているような医療機関における7対1入院基本料の算定に縛りをかけたのです。
これにより、約36万床ある7対1入院基本料の届出数を、2025年までに約18万床まで減らす方向性が打ち出されました。急性期を担う医療機関にとっては、自院の病床機能のあり方を見直し、「病棟再編」という大きな課題を突き付けられた訳です。
今回の2016年度改定においても、これらの算定要件のうち、看護必要度の評価基準がさらに見直され、7対1病棟の絞込みがより一層厳しいものとなりました。
それでは、今改定における看護必要度の具体的な改定内容について見ていきます。
4.看護必要度の見直しについて(概要)
現行の基準を満たす患者以外にも、医療の必要性が高い患者も多くみられることから、急性期に密度の高い医療を必要とする状態が適切に評価することを目的として、今改定において、一般病棟で用いられる重症度、医療・看護必要度の要件がさらに厳格化されました。(図1参照)
※図1『2016年3月4日版・平成28年度診療報酬改定の概要(厚生労働省保険局医療課長宮嵜雅則氏)』より転載
具体的には、手術直後の患者や無菌治療室での治療、認知症・せん妄の患者、救急搬送後の受け入れ実績等が新たに評価項目として加わっています。
また、10対1や在宅への移行を推し進める観点から、7対1入院基本料の施設基準に定められている該当患者割合の要件が15%から25%以上へ、在宅復帰率が75%から80%以上へと引き上げられています。
これは「見掛け」だけの7対1看護体制に対して評価を行うのではなく、高度急性期医療を必要とする患者とそれに見合う看護体制の「中身」をきちんと評価し、増えすぎた7対1病棟の絞込みと病床機能分化を推進しようとするものです。これにより7対1病棟は、18,000床程度減少するという試算も出ているようです。(注2)
次回は、この看護必要度の見直しに伴う7対1病棟の絞込みによって、医療機関にどのような影響が出てくるのか、このまま7対1病棟を維持する場合と、維持せず他病棟への転換を図る場合のそれぞれの視点から見ていきます。
<引用文献・URL等>
・注2)https://www.kango-roo.com/sn/a/view/2802