2016年度診療報酬改定「看護必要度の見直しと7対1病棟への影響度」~2025年を見据えた病棟再編のポイントを探る~(1)

MN18(1)1.はじめに
 
 5月に入り、新年度も1ヶ月が経過しました。
 医療機関の皆様におかれましては、4月に診療報酬が改定され、改定後初めてのレセプト請求ということもあり、改定内容を踏まえた算定と請求内容の点検作業に、いつもよりも時間と労力を要したことかと思います。

 今改定の基本的視点としては、前回の2014年度改定の結果検証により「病床機能分化・連携の推進」や「かかりつけ医の強化」等があげられています。また、2025年の医療提供体制を見据えた様々な評価項目が見直されました。
 その中でも特に注目すべき改定項目のひとつに、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直し」(以下、看護必要度の見直し)があげられます。これは、増えすぎた7対1病棟の絞込みと、病床機能分化の推進を図ることが背景としてあり、当社のお取引先の病院様からは、『病棟再編を早急に検討する必要がある』との声も出ています。

 今後、7対1病棟を維持することが難しくなる中で、医療機関にどのような影響が出てくるのか、本稿では、この「看護必要度の見直し」について取り上げます。
 はじめに7対1病棟の導入経緯や課題等を踏まえた上で、「看護必要度の見直し」の概要と医療機関への影響度について確認し、2025年を見据えた病棟再編のポイントを探ります。
 まずは、7対1病棟と看護必要度評価基準の導入経緯について見てみます。

 

2.7対1病棟と看護必要度評価基準の導入経緯

 7対1看護体制の病棟は、2006年度の診療報酬改定で導入されました。これは、当時の医療制度改革の方針として、平均在院日数の短縮と急性期医療の実態に対応した手厚い看護配置を適切に評価することを目的として制定されました。
 平均在院日数を短くし、看護師の頭数さえ揃えれば、1日あたり1,555点という高い入院料(一般病棟7対1入院基本料)を算定できることから、急性期医療を担う多くの医療機関がこぞって同入院基本料の算定要件を目指しました。また、看護師の数さえ増やせば、手厚い診療報酬が得られることから、中小規模の医療機関も急性期医療を担おうとして同入院基本料の取得を目指したのです。
 ところが、7対1入院基本料を届け出ている医療機関の中には、必ずしも手厚い看護配置を必要としない医療機関が含まれていたり、看護師不足等に陥る医療機関が続出したりする等の問題が発生しました。

 これを受け、2008年度の診療報酬改定から、一般病棟用の重症度・看護必要度の評価が算定基準に導入されました。2012年度の診療報酬改定では、さらにその基準が見直され、平均在院日数を19日以内から18日以内に短縮し、重症度・看護必要度についても対象患者の割合が10%から15%以上に引き上げられました。
 しかし、これら診療報酬改定による政策誘導の思惑通りにはいかず、当初2万床程度に収まるとされていた7対1入院基本料の届出数は減少することはなく、2013年には、約36万床まで大幅に増加したのです。(注1)

 このように7対1病棟が増えすぎた結果、大規模病院と中小規模病院、都市部の病院と地方都市の病院とで看護師数に片寄りが生じるようになり、看護師の確保ができなかった場合には、病床数の削減や休床をせざるを得ない医療機関が見られるようになりました。
 また、急性期治療を終了した後の患者の受け皿となる亜急性期治療を担う病棟が不足し、転院・転棟先が見付からずに長期入院を余儀なくされるケースも見られるようになったのです。

 一方、これらの問題を受け、急性期を担う医療機関における課題も出てきました。
 次回は、7対1病棟に対する医療機関の課題と今改定における看護必要度の具体的な改定内容について見ていきます。

 

<引用文献・URL等>
・注1)https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/201405/