剖検とAi(死亡時画像診断) の位置づけ~医療事故調査制度の視点・論点~

外科医~はじめに~
 昨年10月からスタートした医療事故調査制度。「日本医療安全調査機構」は、制度開始3ヶ月(10月から12月)で累計81件の報告があったと発表しました。既に、ご紹介したように、医療事故調査制度とは「医療に起因した予期せぬ死亡事故」が発生した場合、民間の第三者機関である医療事故調査・支援センター(厚労省が昨年8月、同制度の第三者機関「医療事故調査・支援センター」として「日本医療安全調査機構」を指定)に報告し、病院のみならず診療所や助産所にも院内事故調査を実施することを義務づけるという制度です。(詳細は、過去の記事一覧「医師法21条問題」をご参照ください)。
 前回は、本制度創設に至った背景や仕組み、「医師法21条問題」等についてご紹介しましたが、読者のドクターから「剖検とAi」に関するご質問を頂戴しました。剖検とは「病理解剖」のこと、Ai(Autopsy imaging[1])とは「死亡時画像判断」のことを指します。
しかしながら、本制度は始まったばかりで、今年6月にはさらなる見直しも予定されており、現時点では、これらに関する具体的なことは何も決まっていません。

そこで今回は、「剖検と死亡時画像診断Autopsy imaging(以下「Ai」という)」の現時点での本制度における位置づけと特徴について確認したいと思います。

1.医療事故調査制度の概要
まず、医療事故調査制度の概要について、おさらいすると、本制度の主な流れとして
https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/setumei_kani_gaiyou.pdfより一部転載
調査の流れ②

 ①    患者死亡。
②    「医療事故」に該当するか判断する。
③    医療事故が発生したことを遺族に説明し、第三者機関である医療事故調査・支援セン
ター(以下「日本医療安全調査機構」)に報告する。
④    院内事故調査を実施する。
⑤    その結果を、遺族に説明し、日本医療安全調査機構に報告する。

というステップをふみます。

上図「調査の流れ」に示すように、患者が死亡した場合、まず、当該死亡が本制度の報告対象となる「医療事故」に該当するか否かを病院等の管理者が判断します。
が、どのような死亡事例を報告しなければならない「医療事故」になるのかが、よくわからないとの声もあります。
日経メディカルOnline (日経メディカル2015/12/12) が昨年11月初旬に実施したアンケートによると、医師会員2901人のうち2%が「報告すべきか判断に迷った死亡事例がある」と回答しています。

 そこで、本制度の報告対象となる「医療事故」とはどのような死亡事例なのか、参考までに以下に記載します。

 医療事故とは
「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるもの」です(医療法第6条の10)。

 判断基準は、「医療の起因性」と、「管理者の予期性」の2要件を満たす死亡又は死産と定義されています。
「医療の起因性」要件については、単なる施設管理上に起因する死亡等や、災害・犯罪・自殺等に起因する死亡等は報告対象外となります。転倒転落等が医療に起因するか否かは、ケースバイケースです。例えば、病院内の廊下を歩行中の患者が、廊下にこぼれていたジュースが原因で転倒し、打ちどころが悪くて死亡した場合は、医療に起因するとは言えないので報告対象外です。

又、「管理者の予期性」要件について、具体的には、以下3項目の「いずれにも該当しない」場合と「管理者が認めたもの」です。
1)医療が提供される前に医療従事者が、患者や家族に対し死亡等が予期されていることを説明していたこと
2)医療が提供される前に死亡等の可能性があることを診療録その他の文書等に記録があること。
3)当事者への事情聴取及び医療安全委員会等への意見聴取の結果、医療が提供される前に医療従事者等により当該死亡等が予期されていると認められたもの。
(医療法施行規則第1条の10の2第1項)

以上「医療の起因性」「管理者の予期性」の2要件を満たした死亡事例が発生し「医療事故」と判断した場合、遺族へ説明するとともに日本医療安全調査機構へ報告し、院内事故調査を実施することになります。

次回は、院内事故調査の手法について解説します。

 

[1]《autopsyは、解剖の意》コンピューター断層撮影法(CT)や磁気共鳴映像法(MRI)などを使って遺体を撮影し、体内の出血や骨折の状態から、病状や死因などを調査する画像診断法のこと。死亡時画像診断。Ai。
[補説]解剖ほど心理的負担が大きくなく、死因がはっきりすることで遺族の罪悪感を和らげたり、隠れた犯罪の発見にも役立つとされる。(出典:デジタル大辞泉)