【派遣期間の新たな期間制限の起算点】
Q:同一人物・同一組織内での3年の期間制限という決まりについて、正しいのは①②③のどれでしょうか。
①2015年改正労働者派遣法の施行日から起算して3年間は現在の組織内で働くことができる
②施行日より前の現在の組織で働き始めた日まで遡ってその日から起算して3年間働くことができる
③施行日以降に更新した派遣契約日から起算して3年間働くことができる
A:法律の改正が行われた場合、改正された内容については、法律の施行後に効力が生じることになり、改正前の時点に遡って効力が生じることはありません。
よって、起算日は、事業所単位の場合は、改正派遣法の施行日以後、最初に新たな期間制限の対象となる労働者派遣を行った日、個人単位の場合は、施行日以後、労働者派遣契約の取り交わしによって派遣労働者が最初に派遣労働を開始した日になります。上記の例では、答えは③になります。
以上のように、改正派遣法の規定が適用されるのは、改正法施行後になります。このことから、改正法施行前に取り交わされた労働者派遣契約の場合、改正法施行日から起算日までの間は、改正前の派遣法の規定が適用されることになります。これを図示すると以下のようになります。以下の図では、改正前の派遣法を「旧法」、改正後の派遣法を「改正法」と記述し、旧法が適用される期間を黒色の矢印、改正法が適用される期間を白抜きの矢印で表しています。
【例:労働者派遣契約が2016年3月31日に更新された場合】
例えば、改正法施行前の2013年4月1日に締結された労働者派遣契約が、2016年4月1日に更新された場合は、改正法施行後の2015年9月30日から2016年3月31日までは、旧法が適用されます。4月1日以降は改正法が適用されることになります。
【クーリング期間】
Q:次のようなケースを想定した場合、どうなるのでしょうか。
①派遣労働者Pさんは経理課に移ったが経理課の仕事に慣れず従来の人事課での仕事を希望した場合は直ぐに戻れるのでしょうか。
②有期雇用者が、派遣元を退職して別の会社に入社し、再就職先が新たな派遣元となったものの、派遣先は同じ事業所で、継続して就業した場合、転職前の在籍期間はリセットされるのでしょうか。
A:派遣労働者を利用していた業務について、受入れを止めた後、再び派遣労働者を利用する場合、この二つの派遣労働の間が3か月を超えないときは、二つの派遣労働は継続したものとみなされます。この結果、二つの派遣労働の期間の間が3か月を超えている場合は、それぞれ別個の派遣労働ということになり、後の派遣労働では新たに期間が進行することになります。つまり、実質的に3か月の派遣労働禁止期間があることになります。これをクーリング期間といいます。
①について
上記より、Pさんが人事課に戻りたいという希望を出した場合、最低3か月間の期間をおけば人事課に戻ることは可能です。ただ、今回の改正において、以下の規定が、派遣元指針や派遣先指針に新たに置かれました。
(1)その派遣労働者が希望していないのに、3か月のクーリング期間の後に再度その派遣労働者を同じ組織単位に派遣することは望ましくない旨の規定
(2)派遣期間の延長を回避することを目的として3か月のクーリング期間の後、再度派遣労働者の受入れを図るようなことは、クーリング期間の濫用として、法の趣旨に反する旨の規定
これらの規定に反しないようにしなければなりません。
②について
たとえ派遣元が変わっても、派遣先で継続して就業している場合は、クーリング期間が存在せず、したがって転職前の在籍期間はリセットされません。
次回は、派遣労働者の処遇関係についての質問と、全体のまとめについて記述します。