「選定療養の義務化」に向けて(まとめ)―医療保険改革法のポイントをさぐる―

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さいごに、医療機関と患者のそれぞれの立場から、同制度をどのように捉えるか考えてみます。

 医療機関の立場からすると、勤務医の労働環境改善等は図りたいが、この新制度がどこまで軽症患者の抑制に繋がるのか、効果の確証が得られていない為、現行との違いがあまり感じられないかもしれません。

 一方で、病院の経営収益を考えると、外来患者数の極端な減少は避けたいと考える医療機関もあり、徴収する金額の設定に苦慮することが考えられます。

 患者の立場からすると、大病院や診療所等が本来の役割を担い、それぞれの医療資源を効率的に活用するためには、定額負担の義務化は仕方ないが、そのための皺寄せやリスクが患者(国民)に向けられることを考えると、新制度に対して疑問を感じると思います。

 また、大病院への紹介状をもらうことを目的に診療所等を受診した場合、その労力や移動にかかる時間と交通費、紹介状(診療情報提供書)の料金を含めた診察代の合計金額を考えると、はじめから直接大病院を受診し、選定療養費を支払った方が効率も良く、経済的ではないかと現実に考える人も多いはずです。

 この新制度については、さらに審議会等で詳細な内容の検討や議論が進められる予定ですので、今後の動向に注視していきたいと思います。

<参考文献・URL等>
*『医療保険制度改革骨子(案)』厚生労働省・公表資料
*『医療保険制度改革骨子(案)付属資料2-2』厚生労働省・公表資料
*『療養の範囲の適正化・負担の公平の確保について』厚生労働省・公表資料
*『医療保険制度改革関連法案の概要と論点-持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案-」厚生労働委員会調査室・寺澤泰大氏
*『療養の範囲の適正化・負担の公平の確保について』平成26年10月15日厚生労働省保険局・公表資料
*『地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案の概要』厚生労働省・公表資料
*『病床機能報告制度と地域医療構想(ビジョン)の策定』厚生労働省・公表資料
*http://www.mri.co.jp/opinion/mreview/topics/201503-3.html
*http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2014/CK2014020502000184.html
*http://www.gentosha-mc.com/column/detail18/
*http://www.dreamnews.jp/press/000001583

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■コラム~筆者のつぶやき~

 初診時の選定療養費をめぐる患者様とのトラブルは、筆者も昔、その対応に負われたことのあるひとりです。“病院を選択する権利や医療費は平等であり保障されるべきだ”と、たびたび詰め寄られたことを覚えています。
 日本の医療制度により「誰でも・いつでも・どこでも」平等に医療が受けられるという人々の認識は強く浸透しているのに対し、選定療養費の存在やその意図するところの認知度は意外と低いということを感じました。
 現在の医療を取り巻く制度・政策は、「医療機関完結型医療」から「地域完結型医療」への移行を推し進め、家庭医や専門医等の役割分担を明確化すると共に、地域医療とかかりつけ医の在り方について見直すことが前提としてあります。
 医療機関においては、他の医療機関との連携体制を強化し、地域における自院の特性や役割を明確にすることについて、いよいよ本格的に取り組まなければならない時期がやってきたと言えます。
 患者においては、信頼できる診療所等での「かかりつけ医」を見つけることと、地元の医療機関のそれぞれの役割をきちんと理解し、状況に応じて使い分けることが必要です。
 そして、そのためには、政府が「選定療養の義務化」を進める目的や意図について、全国民への周知徹底と理解を図り、いかに同意が得られるかということが、新制度の行方を左右する重要なポイントになると思います。

■編集後記
 4月11日~13日の3日間、「第29回日本医学会総会2015関西」に参加してきました。『医学と医療の革新を目指して―健康社会を共に生きるきずなの構築―』をメインテーマに、京都にて開催されました。
 4年ごとに開催される医学会総会ですが、前回の第28回が東日本大震災の影響を受けた為、今回が8年ぶりの本格的な開催となりました。
 そのため、雨天にも関わらず、初日の開会式ではメイン会場に参加者が収まりきらず、別に設けられたサテライト会場でも立ち見が続出する程の盛況ぶりで、いかに今回の総会が多くの医療関係者にとって待ち焦がれたものであるか、関心度の高さがうかがわれました。
 そんな総会に今回初めて参加したのですが、最先端の医療技術や医学の進展を間近に感じ、また、著名な方々の講演に耳を傾け、医療に関する制度・政策をはじめ多くを学ぶことができました。よい刺激を受け、とても有意義な3日間でした。
 昨年の医療介護一括法の施行に伴い、すでに地域医療ビジョンの策定や臨床研究中核病院に関する政策が、10月からは医療事故調査制度や看護師特定行為研修制度等、あらゆる制度・政策が順次施行され、今まさに日本の医療業界は大きな動きを見せています。これら最新動向と今後の展望に、これからも注目していきたいと思います。
 梅雨も明け、いよいよ暑い季節に入りました。熱中症等、体調管理にどうぞお気をつけくださいね。