初診時の選定療養費の実態と新制度の概要―医療保険改革法のポイントをさぐる―

紹介状3.現行制度の実態
 200床以上の病院の外来受診抑制を目的とした現行の初診時の選定療養費ですが、下図の患者調査結果を見ると、病床数が200床以上の外来患者数の総数に占める紹介状なしの患者の割合は、約6~8割と高い水準を占めていることがわかります。
 また、初診時の選定療養費を徴収している200床以上の医療機関数は45%程度にとどまっており【3】、導入していない医療機関数の方が多いのが現状です。
 
 
 ※病床規模別の紹介率の状況①病床規模別の紹介率の状況

*平成26年10月15日厚生労働省保険局「療養の範囲の適正化・負担の公平の確保について」より資料転載
 
 
 このように、現行制度では、その目的を実際に果たせているとはいえず、期待通りに機能していない実態があります。
 そこで、選定療養費の定額負担を徴収することを義務化し、医療機関の更なる機能分化を促進するために、新制度の制定が検討されることになりました。

 
4.新制度の概要
 
厚生労働省の公表資料によると、「紹介状なしで大病院を受診する場合等の定額負担の導入」について、次のように説明しています。

「外来の機能分化を進める観点から、平成28年度から紹介状なしで特定機能病院及び500床以上の病院を受診する場合等には、選定療養として、初診時又は再診時に原則的に定額負担を患者に求めることとする。」
 
 
紹介状を持参せず大病院を受診した患者から、窓口での一部負担金に追加して、5,000円から1万円の定額負担を徴収することを「義務化」するというものです。【下図参照】

図1*厚生労働省・公表資料『医療保険制度改革骨子(案)』より転載
 

 初診時は救急等の場合を除き、また、再診時は患者へ他の医療機関を紹介したにもかかわらず再度受診した場合に、それぞれ定額負担が徴収されます。
 義務化の対象となる医療機関は、特定機能病院及び500床以上の病院です。

 目的としては、前述の通り、医療機能の役割分担や外来受診抑制という従来からの狙いがありますが、次回は、この新制度の導入に至った背景について見ていきます。

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【3】平成26年10月15日厚生労働省保険局「療養の範囲の適正化・負担の公平の確保について」より資料抜粋