患者への特別徴収が「義務化」!?―医療保険改革法のポイントをさぐる―

窓口1.はじめに
 病院の会計窓口でのトラブルのひとつに、診察代とは別に患者が負担する「初診時の選定療養費」があります。
 周知の通り、「初診時の選定療養費」とは、患者が他の医療機関からの紹介状を持たずに受診した場合に徴収するものです。
 これは厚生労働省により、風邪等の初期の治療は診療所等で、高度・専門医療は200床以上の病院で行い、医療機関の機能分担を推進することを目的として制定された「保険外併用療養費制度」のひとつです。
 このことを窓口で丁寧に説明しても、なかなか納得していただくことができず、トラブルになることがあります。

 現在は、紹介状がない場合に選定療養費の徴収を行うことは、200床以上の医療機関において「任意」とされています。
 ところが、来年の4月以降、これが大病院において「義務化」されることが決まりました。
 
 「義務化」によって、さらに患者とのトラブルにならないのか、今回は『紹介状なしで大病院を受診する際の定額負担の導入』(選定療養の義務化)について取り上げたいと思います。

 まずは、現行の保険外併用療養費制度と初診時の選定療養費について確認し、その上で新制度の概要と導入に至った背景や目的、課題等について解説していきたいと思います。


2.保険外併用療養費制度について
 
日本の医療保険制度は、保険診療と保険外診療(自由診療)の併用は認められておらず、もし併用する場合は、保険診療分も含めて、全額自己負担となります。(混合診療の禁止)
 ただし、保険外診療のうち、厚生労働大臣が認める先進医療や患者の自由な選択に係る療養(差額ベッド代等)においては、患者の同意を要件として、保険診療との併用が認められています。
 この場合の保険外診療分(先進医療や患者の自由な選択に係る療養)については、全額自己負担となりますが、保険診療分(入院基本料等)については、健康保険が適用されます。【下図参照】

保険外併用療養費

 *平成25年11月19日第20回規制改革会議・厚生労働省保険局提出資料より転載

 
 この時の保険診療分の費用を「保険外併用療養費」といい、このような制度のことを「保険外併用療養費制度」といいます。一定のルールの中で患者ニーズに対応することを目的として制定された制度です。

 この制度は、昭和59年に創設された「特定療養費制度」がその始まりですが、平成18年の健康保険法の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)において見直され、混合診療の対象範囲等を広げることを目的として、「保険外併用療養費制度」と名称も新たに施行されました。
 
 この保険外併用療養費制度における保険外診療は、次の2つに区分されています。
 先進医療や保険収載前の医薬品の使用等、将来的な保険適用を前提として、その可否を評価するための「評価療養」と、特別の療養環境の提供(差額ベッド)等、患者本人が希望して受けることができる「選定療養」の2つです。
 
 この「選定療養」の中のひとつに、200床以上の医療機関において紹介状がない初診患者への特別徴収(初診時の選定療養費制度)があります。
 これは、特定療養費制度の時代より認められているもので、診療の一部負担金とは別に、各病院が独自で設定した特別な料金を患者から徴収してもよいということになっています。特定機能病院においては昭和63年より、200床以上の医療機関においては平成8年より実施されています。
 
 例えば、風邪で喉が痛むので、自宅近くの病院に初診でかかったとします。
 簡単な検査や処置を受け、最後に薬をもらって診察終了となった場合の診察費が4,600円【1】だったとしたら、窓口での支払は、3割負担の人なら1,380円で済みます。
 ところが、その病院の規模が200床以上あり、紹介状なしで受診していたとします。
 この場合、初診時の選定療養費として、病院が独自に定めた金額(例えば5,000円等)を別途、患者に追加請求してよいということになります。
 ただし、救急車での受診等、緊急を要する場合や公費医療、交通事故等の場合は徴収の対象外となります。
 
 ちなみに、初診時に徴収する特別料金の設定金額は、全国で実施している医療機関1,191施設のうち、最高額が8,400円、最低額が105円、平均で2,130円【2】となっています。
 
 この制度の目的は、限りある医療資源を効率的に活用するという観点から、大病院の外来は紹介患者を中心とし、一般的な外来受診は診療所等の「かかりつけ医」を受診するというシステムを普及させ、医療機関の適切な役割分担を図ることにあります。

 次回は、この現行制度の実態を見ていきたいと思います。

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【1】初診料2,820円、処置料120円、検査料260円、投薬料1,400円(合計4,600円)とした場合
【2】平成25年7月1日現在(第82回社会保障審議会医療保険部会資料1より抜粋)