知っておきたい!マイナンバー制度のあれこれ-マイナンバー制度開始に向けて-

マイナンバー-はじめに-

3月上旬、マイナンバー法(「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の通称)と個人情報保護法の改正案が閣議決定され、今国会に提出されました。
このマイナンバー法を根拠として、国民一人一人に番号を割り当てるマイナンバー制度が、2016年1月からスタートします。

マイナンバー制度の正式名称は「社会保障・税番号制度」といいますが、この名前からもわかるように、政府は、社会保障と税を対象にした関係機関が情報をやり取りして、行政の効率化を図るとともに、国民の利便性を高め、公平、公正な社会の実現を期待しています。

すでにテレビのCMで「1人に1つ、自分だけの番号で私達の生活がよくなっていく」等と公開されていますが、マイナンバーとは、各個人が持つことになる個人番号の愛称です。が、一般企業や医療機関においても従業員の源泉徴収や社会保険料の給与天引きなど行政と関わる業務において、従業員の個人番号を必然的に取り扱うことになるため、マイナンバー制度で関係してくるのは、官公庁や自治体などの行政機関だけではありません。

そこで、今回は、マイナンバー制度とはいったいどのような制度なのか、マイナンバー制度開始に向けて、知っておきたい基本的な知識と注意すべきポイントについて解説したいと思います。

◆マイナンバー制度とは
内閣官房の公表資料(参照URL文末記載)によると、マイナンバー制度について
「複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり、社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための社会基盤(インフラ)である。」
と説明しています。

一読しただけではわかりにくいと思いますが、理解するには、制度導入の背景とともに変遷について知る必要があります。

まず、背景についてみてみましょう。

◆マイナンバー制度導入の背景
日本では、基礎年金番号や健康保険被保険者番号、パスポート番号、納税者番号、運転免許証番号など、複数の行政機関が個別に番号をつけているため、別々の番号を持つ1人の人が同一人物だと証明するには、手続きのたびに住民票や課税証明書を提出しなければならず、非常に非効率な部分が多いのが現状です。

マイナンバー制度は、これらを1つの番号に統一し共通番号を発行して、あらゆる行政サービスを一元管理することが出来るようにしようという制度です。

詳細は後述しますが、当該制度の開始により、本人確認の手続きが大幅に効率化されるだけでなく、収めている税と受けている社会保障制度を結びつけることで、必要な人に必要なだけの公的サービスを提供できるようになります。

国民一人一人に番号を割り当て、その番号で一元管理するという構想は、すでに半世紀以上前から始まっています。しかし、根強い反対があり、実現には至りませんでした。なぜ実現しなかったのか、次に、その変遷を簡単にご紹介しておきます。

◆マイナンバー制度実現までの変遷
構想の始まりは1968年、佐藤栄作内閣が、通称「国民総背番号制」として、個人の所得を正確に把握するため、特に高所得者から税を集めることを目的に導入をめざしました。しかし、反対論が根強く実現しませんでした。

その後、1980年に少額貯蓄に対する非課税制度、いわゆる「マル優」[1]) の不正利用を阻むため、納税者番号を割り振る「グリーンカード制度」として導入が決まったのですが、この制度も、また、個人の権利や利益を奪うという強い反論が出て、実施には至りませんでした。

その次の試みが2002年から始まった「住民基本台帳ネットワークシステム」の導入とそれに伴う「住民基本台帳カード」の発行です。登録する情報は、氏名、生年月日、住所、性別の4つの基本情報で、住民票の写しの交付や転出入届けを簡素化するなどの他、本人確認手段としても活用が考えられました。しかし、発行開始から10年以上経過した2014年3月時点でも、有効交付枚数が666万枚、人口普及率で5.2%にとどまっており、結果的には、未だ十分に活用されているとはいえません。[2])

このような変遷を経て、ようやく民意のハードルを越えマイナンバー制度が実現するに至ったのは、これまでと違って、社会保障制度と組み合わせたことにあります。

つまり、「税を取り立てるため」の制度から、「よりよい行政サービスを提供するため」の制度へと、制度の趣旨が変わったからだと考えられます。特に中低所得者について、税を負担する力を考慮して取り過ぎた税を還元するという発想が柱になっています。
どのような発想かと言うと、2017年4月から税率10%引き上げが予定されている消費増税にあわせた「給付付き税額控除」の導入検討です。

ここで、民主党政権が「社会保障と税の一体改革」で導入をめざした「給付付き税額控除」について、少し説明しておきましょう。

一般的な「税額控除」は、税額を減らす仕組みなので、税金を納めることができる所得があることが前提となり、一定程度の所得がある人にしか恩恵がありません。
一方、「給付付き税額控除」は、所得に合わせて取り過ぎた消費税分だけ税額を減らすとともに、さらに、所得が低く税金を納めることができない人には、その分の給付を行うというものです。給付はまず社会保険料に充てられるので、将来の年金も確保できるという仕組みです。
つまり、「給付付き税額控除」とは、税額控除と社会保障給付を一体化した制度であり、税額控除の恩恵が及びにくい低所得者向けの支援策として、カナダなどで導入されています。

支援が必要な人に確実に給付するためには、所得の正確な把握が必要であり、そこでマイナンバー制度が威力を発揮することになります。

では、マイナンバー制度とはいったいどのような仕組みなのか、次回は、制度の仕組みについて、その特徴を、総務省公表資料を基に解説します。


 

[1]) 少額貯蓄非課税制度。貯蓄の奨励と社会保障の支援を目的に,少額貯蓄の利子を非課税扱いとして優遇する制度。-大辞林 第三版より-