混合診療全面解禁による影響は?-患者申出療養制度(仮称)-

患者申出療養3◆私たちに与える影響(メリット・デメリット)
 
患者申出療養制度が導入された場合、まず、メリットとしては、次のようなことが考えられます。

 ■メリット
  ①多様な患者ニーズへの対応
  ②医療の質の向上
  ③医療産業の競争力の強化
  ④公的医療制度の費用削減効果

 この中でも①は、困難な病気を抱える患者やその家族にとっては、保険診療だけでは治療が難しかった病気に対して「治療の選択肢」が増えることになり、多くの高度な医療が受けられるようになります。
 また、日本の医療産業にとっては、最新の医薬品等の安全性や有効性のエビデンスが確立され、保険適用を評価するきっかけとなる為、医療技術の向上と発展に繋がるとされています。
 さらに、保険範囲外の診療の拡大が、民間医療保険の普及を促し、結果、公的医療費や社会保障費等の医療費抑制の効果が期待できると言われています。

 このようなメリットが期待できる一方で、異を唱える方が少なくありません。では、どのようなことが懸念され、問題があるというのでしょうか。次にデメリットについて見てみます。

 ■デメリット
  ①医療費の患者負担の増大
  ②所得の差=医療の差
  ③医療事故や健康被害の多発
  ④公的医療制度の費用拡大の懸念

 患者申出療養は、保険範囲外の診療となる為、「お金にゆとりのある人が高度な医療を受けることができ、そうでない人は自分の財力に見合った医療しか受けられない」ということが考えられます。
 つまり、所得の多寡によって受けられる医療に「差」が生じ、人の命と健康がお金で左右されるということが懸念される訳です。これにより「誰でも・どこでも・いつでも」医療を受けられる国民皆保険制度が空洞化し、無差別平等の医療が崩壊すると言われています。
 また、昨今のインターネットの普及率の向上により、安全性のエビデンスが裏付けされていない治療法等を患者が自己判断で選択し、そこに収益を優先する医療機関が便乗することも考えられます。結果、医療事故や健康被害が多発することが危惧されています。
 さらに、民間医療保険の普及により過剰な医療利用が促され、混合診療の例外件数が増加することにより、公的医療費や社会保障費が拡大してしまうということが世界的にも確認されているようです。

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 以上、患者申出療養制度を概観し、私たちに与える影響を見てきましたが、皆様はこの新制度についてどう考えるでしょうか。私たちの誰もがいつでも「困難な病気を患う患者」に成り得ることから、決して他人事ですまされるものではありません。
 
 この新制度に関する動向を注視しながら、本サイトでも随時取り上げ、情報発信していきたいと思います。今年も一年、よろしくお願い致します。

<参考文献・URL>
・医学通信社『月間/診療報酬(2014年11月号)』
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000067036.pdf
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000064189.pdf