さて、各医療機関は、10月1日から11月14日までに以下の4項目を都道府県に報告することが義務付けられています。
① 今年7月1日時点における病棟ごとの病床機能(表1の中のいずれか一つ)
② 6年後の病床機能の予定
③ 構造設備・人員配置等に関する項目
④ 具体的な医療の内容に関する項目
病床機能を報告する際、高度急性期機能と急性期機能の違いがわかりにくいという指摘があり、高度急性期機能に該当すると考えられる病棟の例が、厚生労働省から提案されています。「救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット、新生児集中治療室、新生児治療回復室、小児集中治療室、総合周産期集中治療室であって、急性期の患者に対して診療密度が特に高い医療を提供する病棟」が、その一例として示されました。
また、③構造設備・人員配置等については「病棟単位」の報告とし、④具体的な医療の内容については、今年度は「病院単位」の報告とされています。
これらの情報は、全国共通のサーバーに集められ、都道府県別に集計された後、DVD等の電子媒体により、今年12月に各都道府県に提供されます。そして、各都道府県においては、これら提供された情報を基に、地域にふさわしい機能別の必要病床数や将来展望をまとめた「地域医療構想(地域医療ビジョン)」を策定し、医療計画に反映させるという流れになります。加えて、都道府県では、医療機関から報告された情報を、患者や住民に対してわかりやすい形に加工し、公表することにもなります。
◆地域医療構想の策定
各都道府県が策定する地域医療構想については、来年3月に発出予定の「地域医療構想策定のためのガイドライン」に示された手順に沿って、病床機能報告制度に基づく情報などを基に策定され、2015年度以降に実施されることになっています。
(公社)日本医業経営コンサルタント協会発行の「機関誌JAHMC 2014/9」によると、今年、医療計画の立案・評価に携わる都道府県の職員を対象として、医療計画PDCA研修が行なわれたそうです。地域の保健医療関連データを分析し、医療計画のPDCAサイクルを推進する能力を取得することを目的としたもので、各都道府県の医療提供体制の課題や目標の設定を行なう人材が、今後育成されていくようです。
以上、医療法改正の全体像を概観し、第六次医療法改正のポイントを、病床機能報告制度を中心に、簡単におさらいしてきましたが、最後に、自院の病床機能を選択するうえで、意思決定するための重要だと考えられるポイントを挙げたいと思います。
◆意思決定するためのポイント
2025年に向けた病床機能の再構築の流れの中で、病院経営者は、自院の機能の再考を迫られています。その病床機能を選択するうえで、検討する視点は大きく分けて以下の3つであると考えられます。
① 各病院機能で求められる患者像を満たすか。
② 必要な医療資源(人員・設備等)と体制(データ抽出、在宅復帰等)を整備できるか。
③ 大規模・基幹病院を除いては、病床利用率を確保できるか。
①と②は厚生労働省が決めることですが、③は地域の患者から、あるいは地域の医療機関から選ばれるかの問題です。重要なことは、自院と同時に、近隣にどのような医療・介護機能が存在し、志向しているかを見極めることにあります。
病床機能報告制度の開始は、多くの医療機関が将来を真剣に考える一つのきっかけになります。
これまで、地域のあらゆる医療ニーズに対応しようとしてきた個々の病院も、今後は、地域の「病院群」の中の一つとして得意な領域の機能に「集中」できるかどうかが、生き残りのキーポイントになるでしょう。
2025年はもう始まっています!