DPC
概要として
DPC制度(DPC/PDPS)については、平成24年度診療報酬改定答申書において「医療機関群の設定、機能評価係数Ⅱの見直し等の影響を踏まえながら、今後3回の改定を目途に継続する段階的な調整係数の置き換えを引き続き計画的に実施すること」とあり、4段階での変更の2回目であり、大きな変更点はなく、大部分は現在の流れを引き継ぐものと予想されています。
基礎係数のあり方について
Ⅲ群を専門病院と一般病院など細分化すべきかの議論はずっと行われてきましたが、細分化したとしても、例えば専門病院の中にも脳疾患専門病院や整形外科専門病院など多様な機能をもった病院が含まれており、更なる細分化が必要となってくるうえに、効率性や複雑性が低い小さな病院であっても、地域に密着して果たしている役割があり、そういった役割を担う病院が基礎係数で評価されるという観点もあります。そもそも医療機関群そのものを変更することではバラつきを補正する事にはならず、様々な役割と機能をもった病院の存在を、機能評価係数によって評価していくべきではないという議論となり、平成26年の改定では細分化は行わないとされています。
機能評価係数Ⅱの項目の見直し
データ提出指数
名称を「データ提出指数」から「保険診療指数」に変更。
新たな評価方法として、「様式間の記載矛盾」があるデータの割合が「1%」以上ある場合、指数を一定程度減じる評価方法の導入が検討されています。
対象となる矛盾とは以下のとおり
① 様式1の親様式・子様式
データ属性等(郵便番号・性別・生年月日)の矛盾
② 様式1とEFファイル
様式1上の入院日数とEFファイルに出現する入院料の回数の矛盾
③ 様式4とEFファイル
様式4の医科保険情報とEFファイルに出現する先進医療等の矛盾
④ DファイルとEFファイル
記入されている入院料等の矛盾
更に、未コード化傷病名の割合が「20%」以上である場合、指数を一定程度減じる評価方法を新たに導入。未コード化傷病名の使用割合は、DPCデータからでは算出できないことから、国が保有する「ナショナルデータベース(NDB)」を活用するため、入院医療分のレセプトに記載されている傷病名が対象となります。
また、以前より論議されていた診断群分類点数表に定義される「副傷病」に対する検討として、「入院時併存病名」および「入院後発症病名」も副傷病と呼ばれることがあり混同を招く可能性があることから、今後「診断群分類点数表に定義される副傷病」については「定義副傷病」と呼ぶことになりました。
適切な保険診療の普及の為の教育に対する評価としては、Ⅰ群病院のみ対象となるが、指導医療官を一定期間派遣した場合に加算となる評価が検討されている。保険指導医、審査支払機関の審査員の派遣についても今後検討していく見込みです。
救急医療指数
現行の「様式1の救急医療入院の有無」に加え、EFファイルから、救急医療管理加算や救命救急入院料等の算定を評価に加える見込みです。入院初日から算定していることが条件になるので、他の救急医療に関する特定入院料の大手術後などの入院途中からの算定は対象とならない方向性にあるようです。
地域医療指数
従前の「4疾病・5事業」が新たに「精神疾患」と「在宅医療」を加え「5疾病・5事業と在宅医療」とし、医療計画を定めるものとされたことを踏まえ、DPCでも「精神疾患」と「在宅医療」の評価導入が検討されている。「精神疾患」は高齢化による認知症患者の増加と、精神疾患エピソードを持つ救急患者が増えている背景から、精神科の役割を評価すべきとの声が高まっていますが、「在宅医療」は在宅療養支援病院が200床未満の医療機関が対象であること等から、DPC対象病院を在宅医療の観点から評価する指標を作るのは難しいのではないかという意見が上がっています。 新規評価項目としては「急性期心筋梗塞の24時間診療体制」と「精神科身体合併症の受け入れ体制」を追加し現行の10項目に2項目を加え、計12項目で評価することとなりました。
追加2項目
① 24時間急性期心筋梗塞診療体制
② 精神身体合併症の受入体制
「急性期心筋梗塞の24時間診療体制」は、時間外で急性期心筋梗塞の治療を行った実績が一定以上ある医療機関を評価。「精神科身体合併症の受け入れ体制」については、「A230-3精神科身体合併症管理加算」又は「A311-3精神科救急・合併症入院料」の施設基準を取得している医療機関を評価することになりました。また、評価項目である災害時における医療において、災害拠点病院に加え、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき都道府県から指定地方公共機関に指定された医療機関への評価が追加され(平成27年からの導入予定)、がん拠点病院には、小児がん拠点病院の追加、平成27年よりは地域がん診療病院、特定領域がん診療病院が追加されます。それに伴って、評価上限ポイントも変更となります、Ⅰ群Ⅱ群病院とⅢ群病院で上限を分けることとなっています。
後発医薬品指数
評価の議論が始まった初期の頃は、効率性指数に組み込まれる予定でしたが、7項目の新たな指数として導入される方向性になっています。対象となる薬剤の範囲は、当該医療機関の入院医療で使用される全薬剤となります。後発医薬品の使用割合60%を目指すというロードマップが示されていることから上限値を60%とし、60%に達していない場合は、その度合いに合わせ連続値で低い評価となる評価方法となります。
DPC算定ルールについて
① 高額薬剤に対応するために設定された点数設定方式の拡大
平成24年度点数改定で、高額な薬剤を使用する診断群分類のうち22の診断群分類において試行的に導入した、入院基本料を除く薬剤費等包括範囲の点数を入院期間Ⅰの点数に組み込む方式(包括期間内に、DPC樹形図に該当する項目が施行されなかった場合出来高に移っても算定が出来ない設定)を26年度でも継続し導入する事が予想されます。実際に22の診断群分類のうち18診断群分類で在院日数の短縮が認められ、20の診断群分類で継続予定、13項目目の追加が検討されています。
② 特定入院期間を過ぎるまで行われなかった高額な材料・薬剤を用いる検査の取り扱いについて
現在悪性腫瘍患者に対する化学療法の一部に使用されている、特定入院期間が過ぎるまで化学療法が行われず、特定入院期間終了後に使用された化学療法の薬剤料は算定出来ないルールは、平成26年度では高額な薬剤だけではなく、心臓カテーテル検査など高額な材料が使用される検査にも拡大することが検討されていましたが、これ以上の複雑化はデメリットが大きいという考えから、今回は見送りとはなりましたが今後も引き続き動向は注視されることとなっており、次回の改定では導入される可能性が強いです。
③ 退院後3日以内に再入院となった場合の算定ルールの変更
現在3日以内の再入院となった症例については、前回入院の「医療資源を最も投入した傷病名」と再入院の際の「入院の契機となった傷病名」の診断群分類番号上6ケタコードが同一の場合、一連の入院とし、前回の入院日からのDPC起算日を再入院にも適応させるルールとなっていますが、この「3日以内」という日数が「7日」に、「入院の契機となった傷病名」が「医療資源を最も投入した傷病名」への変更の可能性が強く、さらには「診断群分類番号上6ケタコード」から「上2ケタ」に変更し「同一病名」から「同一診療科の疾患」への拡大が検討されています。ただし、繰り返しの化学療法等は除外されることとなっていますが、その場合は化学療法を実施した旨を診療報酬明細書の摘要欄に記載することとされています。
(平成26年1月15日現在)